記事がたまってくると、サイトの中に何があるのかを運営者自身が把握しきれなくなる。似た題材の記事が複数ある、公開当時の情報のまま止まっている、現在の事業では扱っていないテーマの記事が残っている、といった状態は本数が増えるほど生じやすい。棚卸しは、在庫全体を一覧化し、1本ごとに処分を決めて実行まで進める作業である。
本記事では、棚卸しの全体手順に重心を置く。どの記事からリライトするかという優先順位は別の論点として扱いを分け、一覧化、分類、処分の判断、処分後の記録までを順に整理する。統合と削除は元に戻しにくい処分であるため、判断の基準と技術的な実行方法の両方を確認しておく必要がある。
棚卸しとは何か
棚卸しとは、公開中の全記事を対象に、現状を一覧で確認し、残す、直す、統合する、消すのいずれかに分類し、分類に応じた処理を実行する一連の作業を指す。目的は記事の本数を減らすことではない。残っている情報が正確であるか、現在の事業と整合しているか、読者の需要に応えているかを全記事について点検し、残す理由と消す理由を記録に残すことが目的である。
Google検索セントラルのSEOスターターガイドでも、コンテンツが最新であることについて、公開済みのコンテンツを確認し、必要なら更新し、的外れになったら削除することが示されている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。棚卸しは、この確認と更新と削除を、思いついた記事だけではなく全記事を対象に、同じ基準で実行するための枠組みである。
前提として確認しておくべき点がある。古い記事を削除すれば評価が上がる、といった効果は約束できない。「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」では、サイトを新鮮に見せれば全体の検索ランキングが向上すると信じて大量の古いコンテンツを削除しても、ランキングは向上しないと明記されている(出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。削除は、情報が誤っている、事業と合わない、といった理由がある場合に選ぶ処分として位置づけることが本記事の立場である。
手順の全体像
棚卸しは、次の5段階で進める。
- 全記事の一覧化:公開中の全記事を棚卸し表に集める
- 記録の付記:流入や順位などの記録を棚卸し表に付け加える
- 分類:基準に沿って残す、直す、統合する、消すに分ける
- 処分の実行:分類ごとに決めた処理を行う
- 記録と確認:実行内容を残し、一定期間の後に状態を確認する
順序を入れ替えないことが重要である。削除から始めると、消した記事の重なりを後から確認できなくなる。
手順1:全記事を一覧化する
最初の作業は、公開中の記事をすべて棚卸し表に集めることである。CMSの記事一覧やサイトマップなどを突き合わせ、漏れがない状態を作ることが出発点になる。下書きや非公開の記事は対象外とし、公開中のものだけを数える。固定ページを含める場合は、種別を記録して区別する。
棚卸し表には、次の項目を持たせる。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| URL | 記事のURL。処分後の転送や削除の確認にも使う識別子になる |
| 公開日と最終更新日 | 公開した日と、実質的な更新を最後に行った日 |
| 題材 | 記事が扱うテーマを短く記したもの。重複の発見に使う |
| 狙ったキーワード | 公開時に想定した検索キーワード。記録がない場合は空欄のままにし、推測で埋めない |
| 流入や順位の記録欄 | 一定期間のクリック数、表示回数、平均掲載順位などを記す欄 |
| 分類と処分の記録欄 | 分類の結果、判断の理由、実行日、実行内容を記す欄 |
次の表は、棚卸し表の記入イメージを示す作例であり、実在のサイトのデータではない。
| URL(作例) | 題材(作例) | 分類(作例) | 理由(作例) |
|---|---|---|---|
| /articles/example-a/ | 料金の目安 | 直す | 料金の記載が旧料金のままである |
| /articles/example-b/ | 料金の目安 | 統合する | example-aと題材と読者が重なる |
| /articles/example-c/ | 終了した事業の案内 | 消す | 現在の事業で扱っていない |
| /articles/example-d/ | 手順の解説 | 残す | 情報が現行の手順と一致している |
棚卸し表は、次回の棚卸しで前回の判断と比較するための記録でもある。分類の理由と実行日を残す欄まで含めて、1つの資料として保管する。
手順2:流入や順位の記録を付ける
一覧化が終わったら、各記事の記録欄に数字を付ける。主な材料はSearch Consoleの検索パフォーマンスレポートである。このレポートでは、Google検索の検索結果におけるサイトのパフォーマンスに関する指標が表示され、トラフィックを集めているクエリの把握などに活用できると説明されている(出典:Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート(検索結果):概要と基本設定」)。
記録する指標は、クリック数、表示回数、CTR、平均掲載順位である。定義は公式の説明で確認しておく。たとえば表示回数はサイトへのリンクがGoogleで閲覧された頻度、クリック数はGoogleからサイトへのリンクがクリックされた頻度、CTRはクリック数を表示回数で割った値と説明されている(出典:Search Consoleヘルプ「表示回数、掲載順位、クリック数とは」)。期間は全記事でそろえ、直近の短期間だけで判断しない。季節で需要が動く題材では、短期間の数字が実態と異なる場合があるためである。
あわせて、他の記事からリンクされているかなど、サイト内の位置づけも記録する。リンクの張り替えが必要になる範囲は、この記録で把握できる。
手順3:分類の基準を決める
分類は、次の4つの基準で点検して決める。数字だけで決めないことが原則である。
基準1:情報の正確さ
料金、制度、手順、仕様、統計の年次など、記事の前提になっている事実が現在も正しいかを確認する。誤りが確認できた記事は、流入の多寡にかかわらず直すか消すかの対象になり、この基準は他の基準より優先する。「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」でも、自己評価の問いとして、コンテンツに明らかな事実誤認がないかが挙げられている(出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。
基準2:現在の事業との整合
記事のテーマが、現在の事業やサイトの目的と合っているかを確認する。終了したサービスの案内や、現在は扱っていない分野の記事は、この基準に抵触する。情報自体が誤りでなくても、事業と合わない記事は読者に現在の提供内容について誤解を与える。逆に、流入が少なくても事業の中心に関わる記事は残す判断がありうる。
基準3:重複の有無
同じ題材を扱い、読者と検索意図が重なる記事が複数ないかを確認する。題材欄を並べると重複は見つけやすい。SEOスターターガイドでは、同じ情報のページが複数ある場合は、使用しないURLから、その情報に最もふさわしいURLへのリダイレクトを設定することが案内されている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。重複が確認できた記事は、統合する分類の候補になる。
基準4:需要の有無
手順2で記録した数字を使い、その題材に検索経由の需要があるかを確認する。表示回数が一定期間にわたってほとんどない記事は、需要がないのか、重複のために埋もれているのかを、他の基準とあわせて判断する。需要がないことだけを理由に削除は決めず、正確さと事業との整合に問題がない記事は、残して次回に再判定する選択肢も残す。
分類ごとの処理
残す:見直し時期だけを決める
4つの基準をすべて通過した記事は、残すに分類する。残すは放置と同義ではない。処理として行うのは、次回の見直し時期を棚卸し表に記録することだけである。料金や制度のように変わりやすい情報を含む記事は間隔を短くし、変わりにくい解説は間隔を長くするなど、題材の性質に応じて時期を決める。次回の棚卸しは、この記録を引き継いで始められる。
直す:リライトの対象として行列に入れる
情報の更新や構成の見直しで回復できる記事は、直すに分類する。その場で書き始めるのではなく、対象の一覧として行列に並べ、着手順を別途決める。棚卸しの場で決めるのは、直すべき箇所の特定までである。どの事実が古いのか、どの論点が不足しているのかを理由欄に記録しておくと、後のリライトで点検をやり直さずに済む。公開日だけを新しい日付に変える作業は実質的な更新ではないため、直すの処理には含めない。
統合する:残す側を決め、転送を設定する
重複する記事同士は、統合するに分類し、情報を1本に集約する。先に決めるのは、どちらを残す側にするかである。判断材料は、内容の網羅度と正確さ、流入や順位、サイト内リンクの集まり方であり、公開日が新しいほうを機械的に残す側にはしない。残す側にもう一方にしかない情報を移し、欠けを確認してから、使わなくなるURLの処理に進む。
使わなくなるURLについては、残す側のURLへのリダイレクトを設定する。Google検索セントラルの「リダイレクトとGoogle検索」では、リダイレクトには永続的なものと一時的なものがあり、永続的なリダイレクトは検索結果に新しいリダイレクト先を表示し、一時的なリダイレクトは検索結果にリダイレクト元のページを表示すると説明されている(出典:Google検索セントラル「リダイレクトとGoogle検索」)。統合は元に戻す前提のない永続的な移転であるため、永続的リダイレクトを用いる。同ドキュメントでは、ステータスコード301と308はページが別の場所に完全に移転したことを意味し、検索結果に表示されるページのURLを変更する必要がある場合は、可能な限りサーバー側の永続的なリダイレクトを使用することが推奨されている(出典:Google検索セントラル「リダイレクトとGoogle検索」)。一時的な移転に使う302や307は、統合の転送には用いない。あわせて、サイト内で使わなくなるURLへ張っていたリンクは、残す側のURLへ張り替える。
消す:削除を実行し、状態を確認する
情報の前提が失われて更新のしようがない記事、事業と合わず残す理由がない記事は、消すに分類する。削除の実行方法は、ページを削除し、サーバーが404または410のステータスコードを返す形にすることである。Search Consoleヘルプの「非表示ツールとセーフサーチレポートツール」では、完全に非表示にする方法として、サイト上のコンテンツを削除または更新し、ウェブサーバーがHTTPステータスコード404または410を返すようにすることが挙げられている(出典:Search Consoleヘルプ「非表示ツールとセーフサーチレポートツール」)。Googleのクローラーに関するドキュメントでも、すでにインデックスされているURLが4xx(429を除く)のステータスコードを返す場合、そのURLはインデックスから削除されると説明されている(出典:Google検索セントラル「HTTPステータスコードがGoogleのクローラーに及ぼす影響」)。
ページは残したまま検索結果にだけ表示したくない場合は、削除とは分けて扱う。同ヘルプでは、完全に非表示にする方法として、noindexタグの指定やパスワードによるアクセスのブロックも挙げられ、ブロックする手段としてrobots.txtを使用しないことも示されている(出典:Search Consoleヘルプ「非表示ツールとセーフサーチレポートツール」)。消すはページ自体の削除を指し、noindexによる非表示は別の処分として記録を分ける。
Search Consoleの非表示ツールは、削除の実行方法と混同しないことが重要である。Google検索セントラルの「Google検索結果からのコンテンツの削除」では、早急に非表示にする必要がある場合は非表示ツールで検索結果から1日以内に非表示にできること、非表示ツールで行われたリクエストは約6か月間有効であることが説明されている(出典:Google検索セントラル「Google検索結果からのコンテンツの削除」)。Search Consoleヘルプでも、非表示ツールは約6か月間の一時的な非表示のみを行うこと、期間が経過すると情報が再び検索結果に表示されるようになることが明記されている(出典:Search Consoleヘルプ「非表示ツールとセーフサーチレポートツール」)。したがって非表示ツールは、誤った情報を含むページを急いで検索結果から外す場合などの一時的な手段として使い、恒久的な削除は404や410を返す形の実行で完結させる。
削除の前には、サイト内リンクの確認も必要である。リンクしているページが残っていると、読者が存在しないページへ誘導されるため、リンクを外すか張り替えてから削除を実行する。
処分後の記録と確認
処分を実行したら、棚卸し表に実行日と実行内容を記録する。統合の場合は転送先のURL、削除の場合は404と410のどちらを返しているか、直すの場合は変更した箇所を記録する。記録がないと、後日に状態が変わったときに意図した処分なのか設定の漏れなのかを切り分けられない。
確認は、処分の直後と、一定期間の後の2回に分ける。直後は、転送先、削除したURLの応答、リンクの張り替え漏れを点検する。期間を置いた確認では、Search Consoleで対象URLの状態とサイト全体の数字の推移を見る。変更がGoogle側に反映されるまでには時間がかかる場合があり、SEOスターターガイドでも、一般的には数週間待ってから検索結果への影響を確認することが推奨されている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。成否を数字の上下だけで判定せず、当初の目的に照らして確認することが前提である。
避けたい進め方
避けたい進め方として、3点を挙げる。第1に、数字の低い記事を一括で削除することである。表示回数の少なさは材料の1つにすぎず、正確さや事業との整合を点検しない一括削除は、残すべき記事まで失うおそれがある。第2に、分類の理由を記録せずに処分だけを進めることである。理由が残っていない棚卸しは、次回に同じ点検を最初から繰り返すことになる。第3に、統合の転送に一時的なリダイレクトを使うことである。転送は、読者が求めた情報に最も近い残す側の記事へ1対1で設定することが原則であり、関係の薄いページへの転送は読者を誤らせる。
まとめ:棚卸しは、一覧化と分類と処分の記録までを1つの作業とする
記事の棚卸しは、全記事を棚卸し表に一覧化することから始める。表にはURL、公開日、題材、狙ったキーワード、流入や順位の記録欄を持たせ、数字とサイト内の位置づけを付記する。分類は、情報の正確さ、現在の事業との整合、重複、需要の有無の4つの基準で行い、数字だけで決めない。残す記事は見直し時期だけを決め、直す記事は箇所を記録して行列に入れ、統合する記事は残す側を決めて永続的リダイレクトで転送し、消す記事は404または410を返す形で削除する。非表示ツールは約6か月の一時的な手段であり、恒久的な削除の代わりにはならない。処分は理由とともに記録し、期間を置いて状態を確認するところまでが棚卸しである。
なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスであり、既存記事の棚卸しと分類を含む分析を工程の前提としている。サービス内容の詳細はサイト内の案内を参照されたい。
出典
- Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」
- Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
- Google検索セントラル「リダイレクトとGoogle検索」
- Google検索セントラル「Google検索結果からのコンテンツの削除」
- Google検索セントラル「HTTPステータスコードがGoogleのクローラーに及ぼす影響」
- Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート(検索結果):概要と基本設定」
- Search Consoleヘルプ「表示回数、掲載順位、クリック数とは」
- Search Consoleヘルプ「非表示ツールとセーフサーチレポートツール」