記事制作の体制を考えるとき、「内製か、外注か」という問いが先に立つことがある。しかし実際の制作は、1つの作業ではない。何を書くかを決める、書く、確かめる、公開する、公開後に測るという、性質の異なる作業の集まりである。まとめてどちらかに寄せると、自社で担う必然性の高い作業まで外に出したり、逆に外へ出せる作業まで社内で抱えたりするずれが起きやすい。

本記事では、二択ではなく工程ごとの切り分けを前提に考える。制作を7つの工程に分解し、どの工程が自社に残しやすく、どの工程が外に出しやすいのかを整理する。そのうえで、自社の体制から判断する観点、担当者1人に寄る属人化のリスクとその手当て、切り分けを決めるための棚卸しの表、そして併用を始める順序をまとめる。費用の考え方や発注先の選び方は別の論点になるため、ここでは扱わない。判断の枠組みそのものを手元に置くことが目的である。

二択で考えるとずれやすい理由

すべてを内製する形には、自社の情報に近い場所で書けるという利点がある。現場で得た知見や、顧客から実際に寄せられる質問を、そのまま題材や本文に反映しやすい。一方で、分析、執筆、確認、公開、測定のすべてを同じ担当者が担う形は、担当者の時間と能力に全体の上限が引かれる構造でもある。本数が増えたとき、あるいは担当者が離れたときに、どこから止まるのかが見えにくい。

反対に、すべてを外注する形にも別のずれがある。執筆の実行は外へ出せても、自社にしかない情報の提供や、公開してよいかを判断する最終確認は、性質上、自社側に残る。情報の提供が曖昧なまま執筆だけが進めば、公開情報の寄せ集めに寄りやすくなる。つまり外注を選んでも、自社の関与がゼロになるわけではない。関与の場所が、書く作業から、材料を渡す作業と確かめる作業へ移るだけである。

したがって問いは「どちらがよいか」ではなく、「どの工程を、どこが担うのが妥当か」である。工程ごとに、必要な情報はどこにあるか、判断は誰が持つべきか、作業量はどの程度かを分けて見れば、内製と外注は対立する選択肢ではなく、組み合わせの設計として扱える。

記事制作を7つの工程に分ける

切り分けの前提として、記事制作を次の7工程に分解する。事業者によって呼び方やまとめ方は異なるが、作業の性質で分ければ、おおむねこの単位になる。

工程主な作業この工程で決まること
1. 分析・題材選定検索需要の調査、競合サイトの確認、自社サイトの既存記事との重複の点検、読者の疑問の整理何を書くか、どの順序で書くか
2. 構成見出しの設計、各見出しで扱う内容と根拠の置き方、記事全体の流れの決定記事の骨格と、書き手が迷わず進める範囲
3. 執筆構成に沿った本文の作成、事例や手順など材料の文章化本文そのものの出来と分かりやすさ
4. 一次情報との照合数字、日付、制度、料金、手順などの事実を、公式の案内や公表資料と照らし合わせる事実関係の正確さ
5. 第三者チェック書いた本人とは別の担当者による全文の通読、構成、表記、根拠の有無、読みやすさの確認思い込みや読み違いを公開前に拾えるかどうか
6. 公開作業管理画面への登録、見出しやリンクの設定、表示の確認、公開の実行原稿が意図した形で読者に届くかどうか
7. 公開後の測定検索での表示や流入の確認、情報の鮮度の点検、更新や書き直しの判断公開した記事を次にどう扱うか

この分解で見えてくるのは、工程ごとに求められるものが違うことである。分析は調査の手順と判断の基準が要る。執筆は文章化の作業量が中心になる。照合とチェックは、書く作業とは別の注意と時間を要する。公開後の測定は、1回で終わらず継続する。Google検索セントラルのSEOスターターガイドでも、公開済みのコンテンツを確認し、必要なら更新し、的外れになったら削除することが示されている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。公開は区切りではなく、測定と更新を含む運用の始まりと捉えるほうが実態に合う。

また、工程を分けること自体にも意味がある。どの工程で時間が止まっているのか、どの工程で手戻りが生まれているのかが、工程単位で初めて見えるからである。「記事が進まない」という状態も、題材が決まらないのか、材料が集まらないのか、確認が滞っているのかで、打つ手は異なる。

自社に残しやすい工程、外に出しやすい工程

自社に残しやすい工程

第1に、自社にしかない情報の提供である。実際の対応手順、現場で蓄積された判断の基準、顧客とのやり取りで繰り返し出てくる質問、公開していない自社の考え方。これらは外部の調査では得られない材料であり、記事の独自性はここから生まれる。Google検索セントラルの「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」は、コンテンツが実体験や深い知識を明確に示しているかを自己評価の問いとして挙げ、信頼性を重視する姿勢を示している(出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。自社の経験に基づく情報を渡す工程は、外へ出すほど薄まりやすい。

第2に、最終確認である。自社の名前で公開する以上、内容が自社の実態や方針と合っているか、公開してよい表現かどうかを判断するのは自社の役割である。この判断まで外へ委ねると、実態と異なる約束や、自社では対応していない内容がそのまま出るおそれがある。最終確認は記事ごとに発生する作業だが、出典や根拠が原稿に添えられている形であれば、確認は「主張と根拠を見比べる」作業に寄せられ、負担の置き場所を設計できる。

第3に、自社固有の知見を要する執筆である。たとえば、現場の判断が分かれる論点への自社の見解や、経験を踏まえた手順の解説など、書くこと自体に自社の知見が要る部分は、内製の必然性が高い。ただし、知見を要する部分と、一般的な説明を文章化する部分は、1本の記事の中でも混在する。知見の提供と核になる記述を自社が担い、周辺の文章化を外が担うという分け方も成り立つ。全編を自社で書くかどうかではなく、記事内のどこに自社の知見が要るかで線を引く考え方である。

外に出しやすい工程

第1に、需要調査や競合確認などの分析である。どの検索語に需要があるか、競合サイトがどの題材をどの程度扱っているか、自社の既存記事と重なる題材はないか。これらは公開情報を手順に沿って調べる作業であり、自社の内部情報を前提としない範囲では外へ出しやすい。もっとも、何を優先するかという最終的な題材の決定は、自社の事業の重点と結びつくため、自社側が根拠を見て判断する形が残る。調査の実行と、優先順位の決定を分けて考えることが要点である。

第2に、執筆の実行である。構成と材料と表記の基準がそろっていれば、本文を文章化する作業は担当者を替えやすい。逆に言えば、執筆を外へ出すときの成否は、書き手の力量以前に、構成と材料がどこまで用意されているかで大きく変わる。材料のない状態で執筆だけを出せば、書き手は公開情報に頼るほかなく、一般論に寄るのは構造として避けにくい。

第3に、書いた本人と別の担当者によるチェックである。自分の文章の思い込みや読み違いは、本人では拾いにくい。別の目で全文を通読し、事実と根拠の対応を確認する工程は、制作の主体が内製でも外注でも独立させたい工程である。Google検索セントラルの生成AIに関するガイダンスでも、AI生成コンテンツを公開する前に、手動でファクトチェックを行い、正確性と信頼性を確認することが重要とされている(出典:Google検索セントラル「ウェブサイトで生成AIによるコンテンツを使用するためのGoogle検索のガイダンス」)。人手で書いた原稿でも、公開前の照合と別の目による確認が必要である点は変わらない。この工程を外の担当者に担わせる形は、内製で書いた記事に対しても成り立つ。

体制によって振り分けが変わる工程

構成、公開作業、公開後の測定は、どちらか一方に決まらない工程である。構成は、題材への理解が深い自社が作る形もあれば、分析と一体で外が作り、自社が確認する形もある。公開作業は、管理画面の権限や社内の承認の流れによって、自社で担うほうが手早い場合もあれば、定型作業として外へまとめる場合もある。測定は、使用している計測の仕組みや、結果を受けて誰が更新を判断するかによって振り分けが変わる。いずれも、工程の性質だけでなく、自社の道具と権限と運用の流れで決めるべきものである。

自社の体制から見る判断

担当者の有無と、時間の使い方

記事制作を担える担当者が社内にいるかどうかは、最初の判断材料である。ただし、見るべきなのは担当者の有無だけではない。その担当者が、分析から測定までの全工程を担うのか、一部の工程に集中するのかで、時間の使い方は変わる。自社に残す必然性の高い工程、つまり情報の提供と最終確認に担当者の時間を使い、調査や文章化の実行を外へ出す形は、担当者が1人しかいない体制でも設計できる。反対に、担当者が複数いて、執筆やチェックを分担できる体制であれば、内製の範囲を広げる判断も成り立つ。

月に作る本数と、その変動

月に作る本数が少なく、時期による変動も大きい場合は、全工程を担う体制を社内に固定的に持つ必然性は下がる。逆に、本数が安定して多く、題材の領域も定まっている場合は、基準や手順を自社に蓄積する意味が増し、内製の範囲を広げても運用が回りやすくなる。ここで重要なのは、本数の多さそのものよりも、変動への耐え方である。繁忙期に確認が滞って公開が止まるのか、逆に閑散期に担当者の手が空くのか。切り分けは、平均の本数ではなく、波がある前提で設計したい。

専門知識の所在

記事の題材に要る専門知識が、文章を書ける担当者とは別の場所にある場合も多い。たとえば、現場の実務者や有資格者が知識を持ち、広報や運営の担当者が制作を担う形である。この場合、実務者が全編を書く形は、実務者側の負担が大きく、継続しにくい。知識を持つ人が材料と見解を提供し、別の担当者や外の書き手が文章化し、知識を持つ人が事実の最終確認をする、という分担のほうが、知識の所在と作業の所在を分けられる。専門知識がどこにあり、その人の時間をどの工程に使うのが妥当かを棚卸しすることが、切り分けの精度を上げる。

属人化のリスクと、その手当て

内製で進める場合に意識したいのが属人化である。題材の選び方、出典の探し方、表記の基準、管理画面の操作、測定の見方までが担当者1人の頭の中にある状態では、その担当者が抜ければ制作は止まる。止まるだけでなく、なぜその判断をしてきたのかが残らないため、引き継いだ側は基準の再構築から始めることになる。品質のばらつきも、基準が個人の中にある間は外から見えにくい。

手当ては、属人化を前提に仕組みへ移すことである。具体的には、題材選定の基準、一次情報として扱う情報源の範囲、チェックの項目、表記のルールといった判断の基準を文書に残すこと。過去の記事について、どの題材をなぜ選んだか、公開後にどう測り、どう判断したかの記録を残すこと。そして、書く人と確かめる人を分け、少なくとも確認の工程には別の担当者が関わる形にすることである。

外注を併用する場合も、属人化の行き先が社外へ移るだけで、同じ問題は残りうる。制作の基準や記録が発注先の中だけにあり、自社に残らない形では、発注先が替わったときに同じ再構築が発生する。併用の設計では、基準と記録は自社側に残る形にしておくことが、体制を長く保つうえでの備えになる。

切り分けを決めるための自社棚卸し

切り分けは、印象ではなく棚卸しで決める。下表の項目を自社について埋めると、各工程をどこへ置くかの材料がそろう。

棚卸しの項目確認すること切り分けへの反映の例
情報の所在記事の材料になる知見、手順、質問の記録は、誰がどこに持っているか材料が現場に散らばるなら、情報提供の段取りを自社の工程として先に設計する
担当者の時間制作に充てられる担当者は何人で、月にどの程度の時間を割けるか時間が限られるなら、情報提供と最終確認に絞り、実行の工程を外へ出す
本数と変動月に作る本数と、時期による増減の幅はどの程度か変動が大きいなら、波を受けやすい工程から外へ出す
専門知識の所在題材の正確さを判断できる人は誰で、その人の時間はどの工程に使うべきか知識を持つ人は執筆ではなく、材料の提供と事実の確認に充てる
チェックの体制書いた本人以外に、全文を通読できる人が社内にいるかいない場合は、チェックの工程だけでも別の担当者に担わせる形を検討する
公開と測定の手段管理画面の権限、計測の仕組み、更新を判断する人は決まっているか手段が未整備なら、公開と測定の設計から併用範囲に含める

棚卸しの結果は、1回で固定するものではない。本数や体制が変われば、妥当な切り分けも変わる。たとえば、始めた当初は分析と執筆を外へ出し、記事が蓄積して自社に題材の知見がたまってきた段階で、構成までを自社へ寄せる、といった移行もありうる。棚卸しは、現時点の体制に対する診断として定期的にやり直す位置づけがよい。

併用を始める順序

併用は、一度に全工程を動かさず、順序を決めて始めるほうが切り分けの検証がしやすい。進め方の例は次の通りである。

  • まず棚卸しを行い、自社に残す工程を先に決める。特に情報の提供と最終確認は、併用の形にかかわらず自社の工程として置く
  • 判断の基準を文書に残す。題材の基準、出典の扱い、表記、チェックの項目を、担当者が替わっても追える形にする
  • 外へ出す工程は、範囲を区切りやすいものから始める。たとえば競合確認を含む分析、構成と材料がそろった状態での執筆、内製原稿への第三者チェックなどである
  • 数本の単位で振り返り、自社の確認にかかった時間、材料の渡し方の不足、手戻りの発生した工程を確認し、切り分けを直す
  • 公開後の測定結果を題材選定へ戻す流れができてから、本数や対象工程を広げるかを判断する

この順序で意識したいのは、外へ出す範囲を広げる判断を、振り返りの後に置くことである。最初から広く出すと、問題が起きたときに、どの工程の切り分けが合っていなかったのかを特定しにくい。範囲を区切って始めれば、合っている工程と直すべき工程を分けて判断できる。

まとめ:切り分けは、体制に合わせて組み替えるもの

記事制作は内製か外注かの二択ではない。分析・題材選定、構成、執筆、一次情報との照合、第三者チェック、公開作業、公開後の測定という工程ごとに、自社に残す必然性と、外へ出すしやすさは異なる。自社にしかない情報の提供、最終確認、自社固有の知見を要する記述は自社に残しやすく、需要調査や競合確認、執筆の実行、別の目によるチェックは外に出しやすい。妥当な組み合わせは、担当者の有無、月に作る本数とその変動、専門知識の所在といった自社の体制で変わる。

そして、どちらの形を選んでも、判断の基準と記録を自社に残すことが、属人化への備えになる。切り分けは1回決めて終わるものではなく、体制と本数の変化に合わせて組み替えるものである。棚卸しから始め、範囲を区切って併用し、振り返って直す。この繰り返しが、無理のない制作体制を作る手順である。

なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスである。分析、執筆、書いた本人とは別の担当者によるチェックを工程として担う立場から、本記事では、内製が妥当な工程も含めて切り分けの枠組みを整理した。併用の形を検討する際の材料の1つとして参照されたい。

出典

  • Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
  • Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」
  • Google検索セントラル「ウェブサイトで生成AIによるコンテンツを使用するためのGoogle検索のガイダンス」