記事を書き始める前に、どの言葉で検索する人に届けたいのかを決める作業がキーワード選定である。ここが曖昧なまま書き始めると、需要のない題材に時間をかけたり、自社で書いた内容と重なる記事を作ったり、競合の強い言葉ばかりを選んだりする。

選定は、センスで言葉を選ぶ作業ではない。候補を広く集め、検索需要を確認し、検索する人の目的を読み取り、競合の状況を見たうえで、自社の事業との近さから順番を決める。この順序で進めれば、選んだ理由も選ばなかった理由も、後から説明できる形で残る。

本記事では、候補の集め方から、需要と意図の確認、競合の見方、優先順位の付け方、一覧での管理、見直しのタイミングまでを整理する。

キーワード選定の全体像

手順は大きく6つの段階に分かれる。候補を集める、需要を確認する、意図を分類する、競合を確認する、優先順位を付ける、一覧に記録する、である。段階を飛ばすと、その分だけ判断の根拠が弱くなる。需要だけを見て選ぶと目的と中身がずれ、意図だけを見て選ぶと誰も検索していない言葉に行き着くことがある。

段階やること確認できること
1. 候補を集める自社と顧客の言葉、サジェスト、競合サイトなどから言葉を集める検討の土台になる言葉の広がり
2. 需要を確認するキーワードプランナーなどで月間平均検索ボリュームを見るその言葉がどの程度検索されているかの目安
3. 意図を分類する検索する人が何をしたいのかを分ける記事で答えるべき内容の方向
4. 競合を確認する実際に検索し、1ページ目に並ぶページを見るどのようなページがすでに答えているか
5. 優先順位を付ける需要、意図と事業の近さ、競合、自社の強みを組み合わせる書く順番と、その理由
6. 一覧に記録するキーワードマップに結果を残す重複の防止と、見直しの材料

Google検索セントラルのSEOスターターガイドでも、読者が検索しそうなキーワードを考えることが取り上げられ、トピックをよく知っている人とそうでない人では使う言葉が異なる点が示されている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。選定の出発点は、書き手の言葉ではなく、読み手の言葉に置くべきである。

候補を集める:3つの入口

候補集めで大切なのは、最初から絞らないことである。需要の有無や競合の強さは問わず、思いつく言葉と見つけた言葉をまず並べ、絞り込みは後の段階で行う。入口は主に3つある。

1. 自社と顧客の言葉から集める

自社のサービス名、商品名、対応地域、料金や手順に関する言葉は、自社で用意しやすい候補である。そこに、顧客が実際に使う言葉を重ねる。問い合わせで繰り返し聞かれる質問、相談の場で顧客が口にする表現、説明を求められる点は、そのまま検索される言葉の候補になる。

注意したいのは、専門用語と日常の言葉のずれである。事業者側が当然のように使う名称で検索する人は、その分野を知っている層に偏ることがある。顧客が自社のサービスをどう呼んでいるか、専門用語を使わずに言うとどうなるかを書き出すと、候補の幅は広がる。これは前述のスターターガイドが触れる、知識の差による検索語の違いと重なる話である。

2. サジェストと関連キーワードから広げる

検索窓に言葉を入力したときに表示される候補や、検索結果に示される関連する検索語は、実際に検索されている組み合わせを知る手がかりになる。中心になる言葉に、地名、目的、対象者、悩みを表す言葉を組み合わせて入力し、出てきた候補を記録する。中心語だけでは拾えない「費用」「手順」「期間」といった修飾語付きの言葉が、ここで見つかることが多い。

Google広告のキーワードプランナーにも、候補を広げる機能がある。Google広告ヘルプによれば、ビジネスに関連する語句やウェブサイトを入力することで、新しいキーワードの候補を確認できる(出典:Google広告ヘルプ「キーワード プランナーを使う」)。自社や競合サイトのURLを起点に候補を出す方法も、その使い方の1つである。

3. 競合サイトの獲得語と記事から拾う

同じ読者を相手にしている競合サイトが、どのような言葉で記事を書いているかも候補の入口になる。競合の記事一覧やカテゴリ構成、よく更新されているテーマを見ると、その事業者がどの検索需要を取りにいっているかが読み取れる。競合が繰り返し取り上げているテーマは、自社の候補にも加える価値がある。

ただし、競合が書いているから自社も書く、という決め方ではない。競合の記事は候補を出す材料であり、書くかどうかは需要や意図を確かめてから決める。見出しや本文を写すのではなく、競合がまだ十分に答えていない点、自社の情報で答えられる点はどこかを考える材料として使う。

検索需要を確認する

候補が集まったら、各言葉がどの程度検索されているかを確認する。代表的な手段が、キーワードプランナーが示す月間平均検索ボリュームである。

Google広告ヘルプでは、月間平均検索ボリュームは「指定した月単位の期間と検索ネットワーク上の地域で、キーワードとその類似パターンが検索された平均回数」と定義され、デフォルトでは12か月間の平均が表示されると説明されている(出典:Google広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」)。つまりこの数字は、特定の1か月の実測値ではなく、類似する言葉まで含めた期間平均の見積もりである。

読み方には注意がある。第1に、このデータは概数である。同ヘルプも、検索ボリュームのデータは概数であり、複数の地域を対象にした場合に単純な合算と一致しない場合があること、検索数は季節やイベントなどで変化することを明記している。第2に、地域や期間の設定で数字は変わるため、設定を自社の商圏に合わせてから読む必要がある。第3に、検索ボリュームが非常に少ないキーワードは、候補や予測の対象にならない場合がある。同ヘルプでは、検索ボリュームが非常に少ないキーワードと、デリケートなトピックに関わるとみなされるキーワードは検出と予測の対象にならないとされている(出典:Google広告ヘルプ「キーワード プランナーを使う」)。数字が出ない言葉が、現実にまったく検索されていないとは限らない。

表示のされ方にも注意が要る。広告を出稿していないアカウントでは、月間平均検索ボリュームが具体的な数値ではなく、「100〜1,000」「1,000〜1万」のような範囲で表示される場合がある。この場合、細かな差の比較には使いにくいが、相対的な大きさの大まかな比較には使える。範囲は桁の違いとして読むのが現実的である。

キーワードプランナーの「競合性」の読み違いにも注意したい。この競合性は、Google広告ヘルプによれば、そのキーワードに入札している広告主の数を相対的に示す指標で、「低」「中」「高」で表示される(出典:Google広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」)。これは広告側の競合状況を示すもので、SEOの難しさそのものを示す数字ではない。SEOの競合判断は、後述するように実際の検索結果を見て行う。

需要の確認で得られるのは、言葉ごとの相対的な大きさである。数字の大小だけで順番を決めず、次の意図の分類と合わせて読むことが前提になる。

検索意図を分類する

同じように検索されていても、その言葉で検索する人が求めているものは異なる。検索意図とは、検索の背後にある目的のことである。意図を取り違えると、需要のある言葉で書いても、求める答えと記事の中身が合わない。

実務では、意図を次の型に分けると整理しやすい。

意図の型検索する人の状態記事で答えること
知りたい言葉の意味や仕組み、方法が分からず調べている定義、理由、手順、注意点の説明
比べたい複数の選択肢があり、違いや選び方を検討している比較の観点、違い、判断材料の提示
決めたい・申し込みたい利用や購入の候補が絞られ、条件を確認している料金、対応範囲、申し込み方法などの具体情報
特定のページに行きたい会社名やサービス名を指定して探している該当ページへの案内そのもの

分類の手がかりは、言葉自体と、実際の検索結果である。「とは」「方法」「手順」は知りたい意図、「比較」「違い」「選び方」は比べたい意図、「料金」「申し込み」などは決めたい意図に寄りやすい。ただし言葉だけで決めつけず、競合確認の際に、検索結果にどのようなページが並んでいるかを見て確かめる。解説記事が並んでいれば知りたい意図が強く、サービスページや料金ページが並んでいれば、決めたい意図が多いと読める。

Google検索セントラルの「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」では、読み終わったユーザーが目的を果たすのに十分な情報を得たと感じられるかどうかが、自己評価の問いとして挙げられている(出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。意図の分類は、その目的を記事ごとに具体化する作業である。

競合を確認する:実際に検索して1ページ目を見る

需要と意図の目安が付いたら、候補の言葉で実際に検索し、1ページ目に並ぶページを確認する。ツール上の指標だけでは分からない実態を見る工程である。

確認する点は主に3つある。第1に、どのような種類のページが並んでいるかである。大手の情報サイトや公的機関のページが中心か、個別の事業者の記事も並んでいるかを見る。第2に、上位のページがどこまで答えているかである。疑問に十分に答えたページがそろっているのか、概要だけで手順や条件に触れていないページが多いのかを見る。第3に、自社が足せる情報があるかである。対応実績に基づく手順、地域固有の事情、料金の考え方など、自社にしか書けない材料で補える余地があるかどうかである。

この確認は、意図の分類の検証も兼ねている。想定した意図と実際に並ぶページの種類が食い違う場合は、検索結果の側に合わせて意図の読みを修正する。

なお、競合が強いことは、その言葉を避ける理由に直結しない。競合が十分に答えていない点があれば書く余地はあるし、需要が大きくても情報の厚いページがそろい、自社が足せる情報が見当たらない言葉は、優先順位を下げる判断もありうる。判断は次の優先順位付けで、他の要素と合わせて行う。

優先順位の付け方

候補すべてを一度に書くことはできないため、書く順番を決める。優先順位は1つの指標では決めず、次の4つの要素を組み合わせる。

要素見ること
需要の大きさ月間平均検索ボリュームの相対的な大きさ。桁の違いとして読む
意図と事業の近さその言葉で来た読者が、自社のサービスや問い合わせにどの程度つながりうるか
競合の強さ1ページ目のページの種類と、内容の厚み
自社の強み自社にしか書けない材料、一次情報、対応実績があるか

需要が大きくても、事業と遠い言葉は後回しになりやすい。一般的な知識を問う言葉は検索数が多くても、読者が自社の顧客層と重なるとは限らない。逆に、需要は小さくても、決めたい意図の言葉で自社のサービスに直接関係するものは、書く価値が高い場合がある。検索数の大きさだけでなく、事業との近さと組み合わせて読むことが大切である。

自社の強みも材料になる。実務で蓄積した情報や、顧客から実際に受けた質問への回答など、他社が持ちにくい材料がある題材は、内容に独自性を持たせやすい。Google検索セントラルは、独自の情報や分析を提供しているかどうかを自己評価の問いに挙げている(出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。材料の有無は、選定の段階で確認しておきたい。

実務上は、各要素を簡単な段階評価にして一覧に並べ、総合して順番を決める方法が扱いやすい。点数の合計だけで決めず、評価が割れた言葉については、なぜその順番にするのかを1行で残しておく。

1キーワード1記事の考え方と、重複への注意

順番が決まったら、記事の単位を決める。基本は、1つの検索意図に対して1つの記事を充てることである。似た言葉が複数あっても、意図が同じであれば分けず、1つの記事でまとめて答える方が読者は探しやすい。反対に意図が異なれば、記事を分ける検討をする。

ここで注意したいのが、自社記事同士の重なりである。選定を記録せずに記事を増やしていくと、同じ意図に答える記事が複数できてしまうことがある。内容が重なる記事が並ぶと、読者はどちらの記事を読めばよいか分かりにくくなる。また、Google検索セントラルのSEOスターターガイドは、異なるURLで同じコンテンツが表示される重複について、ユーザーエクスペリエンスを損ないうるものとして取り上げている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。これは主に同一内容のページに関する話だが、意図が重なる記事を増やさないという実務上の注意とも重なる。

重複を避ける手順は、新しい記事を決める前に既存記事の一覧と照合することである。すでに同じ意図の記事がある場合は、新規に書くのではなく、その記事を更新して不足を補う選択肢を先に検討する。

選定結果をキーワードマップで管理する

選定の結果は、一覧の形で残す。この一覧をキーワードマップと呼ぶ。残す項目は、運用に必要な範囲でそろえる。

  • キーワード:対象とする言葉
  • 検索意図:知りたい、比べたい、決めたいなどの分類
  • 月間平均検索ボリューム:確認した時点の数値または範囲と、確認日
  • 競合の所見:1ページ目の様子と、自社が足せる情報
  • 優先順位と理由:書く順番と、その判断の根拠
  • 対応する記事:執筆済みの場合はそのURL、未着手の場合はその旨
  • 状態:未着手、執筆中、公開済み、見直し済みなどの進み具合

一覧にする利点は2つある。1つは重複を防げることであり、新規の候補が出てきたときに、同じ意図の記事が既にあるかを確かめられる。もう1つは、選ばなかった言葉と理由が残ることである。見送った言葉も状況が変われば候補に戻ることがあり、理由が記録されていれば再検討は短時間で済む。

見直しのタイミング

キーワード選定は、1回行えば終わる作業ではない。検索需要は、季節や社会の動き、制度の変更などによって変わる。Google広告ヘルプも、ウェブトラフィックは季節やイベントなどさまざまな要因に左右され、検索数も常に変化するとしている(出典:Google広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」)。

見直しのきっかけは主に3つある。第1に、公開した記事の表示や流入を一定期間見て、想定した需要や意図と実態がずれていないかを確かめることである。ずれがあれば、記事の更新や意図の読み直しを行う。第2に、自社のサービスや対応地域が変わったときである。第3に、競合の動きである。競合が新しいテーマの記事を増やしている場合は、その領域の需要や競合状況が変わっている可能性がある。

Google検索セントラルのSEOスターターガイドでも、公開済みのコンテンツを確認し、必要なら更新し、的外れになったら削除することが挙げられている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。記事単位の更新と合わせて、キーワードマップ自体も見直し、需要の数字と優先順位を取り直す運用にしておきたい。

まとめ:順番を決め、理由を残す

キーワード選定は、候補を集める、需要を確認する、意図を分類する、競合を実際に検索して確認する、需要と事業の近さと競合と自社の強みから優先順位を付ける、という手順で進める作業である。大切なのは、検索数の大きさだけで決めないことと、決めた理由をマップに残すことである。理由が残れば、重複を避け、見直しでも判断を積み重ねていける。

なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスであり、キーワードの調査と競合の確認をもとに書く順番を決め、一覧の形で示すことを工程の前提としている。サービス内容の詳細はサイト内の案内を参照されたい。

出典

  • Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」
  • Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
  • Google広告ヘルプ「キーワード プランナーを使う」
  • Google広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」