士業事務所、店舗、工務店やリフォーム事業者、クリニックのように、商圏が地域に限られる事業者にとって、検索対策の出発点は全国向けの記事とは異なる。来てほしいのは、来店や相談が可能な範囲にいる、具体的な困りごとを持った人である。

ところが実務では、検索回数の多い言葉を追って地域の読者には遠い記事になることや、地域名を題名に入れただけで中身は一般論で終わることがある。

本記事では、地域名を含む検索の特徴を確認したうえで、キーワードの設計方法、題材の型、記事ページと店舗・事務所ページとGoogleビジネスプロフィールの役割分担、小さな商圏での優先順位の付け方を整理する。

地域名を含む検索は、行動の場面から始まる

地域の事業者を探す検索は、大きく2つの形に分けられる。1つは「地域名+業種」であり、もう1つは「地域名+悩み」である。前者は「どこに、どんな事業者があるか」を探す検索であり、後者は「自分の困りごとを、近くで相談できるか」を確かめる検索である。

検索の形検索者の状態求められる情報
地域名+業種依頼先や来店先の候補を探している所在地、営業時間、対応するサービス、料金の考え方、アクセス
地域名+悩み困りごとがあり、近くで相談できるかを知りたい悩みへの答え、手続きや進め方、相談先の選び方、地域固有の事情

地域名の入り方は一様ではない。市区町村名で探す人もいれば、駅名や地区名で探す人もいる。さらに、地域名を含めない検索でも、検索している人の現在地が結果に影響する。Googleビジネスプロフィール ヘルプは、利用者が現在地を共有していない場合は、Googleが現在地について把握している情報に基づいて検索結果が表示されるとしている(出典:Googleビジネスプロフィール ヘルプ「Googleのローカル検索結果のランキングを改善するヒント」)。地域の検索は、地域名を含む検索だけを指すのではない。

この特徴は、記事の書き方にも影響する。地域向けの記事は、検索した人が「自分の地域の話として読めるか」「相談や来店の判断材料になるか」が問われる。地域名を題名に足すことと、地域の読者に向けた内容であることは、別の問題である。

ローカル検索結果の順位は、主に関連性・距離・知名度で決まる

Googleビジネスプロフィール ヘルプによれば、ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度の3つの要素に基づいて表示され、これらの要素を組み合わせて検索結果が決まる(出典:Googleビジネスプロフィール ヘルプ「Googleのローカル検索結果のランキングを改善するヒント」)。同ヘルプは、ランキングを上げるためのリクエストや金銭の受け取りにGoogleは応じていないとも明記している。順位は、対価で動かせるものではない。

関連性とは、検索語句とプロフィールが合致する度合いである

同ヘルプは、関連性を「検索語句とビジネス プロフィールが合致する度合い」と定義し、ビジネスについての的確な情報を提供すると、リスティングと検索語句との関連性を高めることができるとしている。ここでいうリスティングは、検索結果に表示されるビジネス情報のことである。

実務への置き換えは明確である。プロフィールに、事業の種類、所在地、営業時間、提供しているサービスなどを正確に入力しておくことが土台になる。同ヘルプも、情報が正確でない場合は、所在地で関連性の高い語句が検索されてもビジネス情報が表示されない場合があるとしている。

距離とは、検索している人から拠点までの距離である

距離は「検索しているユーザーから各ビジネス拠点までの距離」と定義されている。この要素は、記事を書く努力では変えられない。商圏の外の人に無理に届けようとするより、商圏の中にいる人の具体的な検索に、的確な情報で応える設計のほうが、事業の実態に合う。

知名度とは、どれだけ広く知られているかである

知名度は「ビジネスがどれだけ広く知られているか」を指す。同ヘルプによれば、この要素は、ビジネスにリンクしているウェブサイトの数やクチコミの数などの情報にも基づいており、クチコミ数が多く評価の高いビジネスは、ローカル検索結果のランキングが高くなる。

3つの要素を並べると、記事の位置づけも見えてくる。距離は立地で決まり、関連性と知名度の一部はプロフィールやクチコミといった、記事以外の情報で決まる。記事は、この全体の中で、検索者の具体的な悩みに答える役割を担う部分である。役割分担については後述する。

キーワード設計は、地域の粒度×サービス×悩みの掛け合わせで考える

地域向けのキーワードは、1語ずつ探すのではなく、3つの軸の掛け合わせで設計すると整理しやすい。軸は、地域の粒度、サービス、悩みの3つである。

  • 地域の粒度:都道府県名、市区町村名、区や地区の名前、駅名など、生活圏を表す言葉
  • サービス:事業者が実際に提供している相談、施術、工事、販売などの内容
  • 悩み:困りごと、知りたい手続き、確かめたい費用や期間など

地域の粒度の選び方が、設計の分かれ目になる。広すぎる粒度では商圏の外の読者まで含み、内容も総論に寄る。狭すぎる粒度では対象は具体的になるが、検索する人の数は少なくなる。目安は、実際に来店や相談があった人の住所や利用駅を振り返り、無理なく対応できる範囲と重なる粒度を選ぶことである。粒度はサービスごとに変えてよく、対応範囲の広いサービスは市区町村名で、来店が前提のサービスは駅名や地区名で設計する分け方が考えられる。

悩みの軸では、検索者の言葉の選び方を予測する必要がある。Google検索セントラルのSEOスターターガイドは、トピックについてよく知っている利用者と、よく知らない利用者とでは、使う検索語句が異なる場合があるとしている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。たとえば相続の相談であれば、制度の正式名称で探す人もいれば、日常の言葉で困りごとをそのまま入力する人もいる。相談の場で実際に聞かれる言い回しを集めておくことが、悩みの軸の材料になる。

以下は、実在しない架空の地名を使った設計例である。地域は青葉市と青葉駅、業種は司法書士事務所とリフォーム事業者、歯科医院を想定している。実在の事業者の事例ではない。

地域の粒度サービス悩み題材の形(設計例)
青葉市相続登記手続きの流れを知りたい青葉市で相続登記の相談をするときの流れと持ち物
青葉駅周辺外壁塗装築年数が経ち、工事の要否を判断したい青葉駅周辺で外壁の傷みが気になるときの確認点
青葉市歯科検診痛みはないが検診を受けたい青葉市で歯科検診を受けるときに聞かれる質問への回答

設計例で見たいのは、題名の形よりも、3つの軸がすべて具体的に埋まっているかどうかである。地域だけが具体化して悩みが曖昧な題材は、書き始める前に掛け合わせを見直したほうがよい。

検索回数が少なくても、記事にする価値が残る理由

地域向けのキーワードは、全国向けに比べて検索回数が少なくなりやすい。商圏の人口が限られる以上、これは自然なことであり、それだけで題材を外す理由にはならない。

理由は、検索の意図の具体性にある。「地域名+悩み」の形で検索する人は、困りごとの内容と、相談したい地域の両方が定まっていることが多い。一般的な知識を得たい段階の検索に比べて、来店や相談という行動に近い場面で起きる検索である。したがって、地域向けの題材は、検索回数の大きさだけで並べ替えるのではなく、意図の具体性と、自社がその悩みに答える用意があるかどうかを合わせて判断する必要がある。

ただし、意図が具体的であることだけで、来店や相談といった成果を断定することはできない。公開後の確認手段はある。

Search Consoleの検索パフォーマンスレポートでは、サイトにトラフィックを集めているクエリを確認でき、クリック数、表示回数(インプレッション数)、クリック率、平均掲載順位といった指標が示される(出典:Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート(検索結果):概要と基本設定」)。想定した地域名や悩みの語句で実際に表示されているかは、このレポートで確かめることができる。

逆に、検索回数が少なく、意図も曖昧な題材は、後回しでよい。自社のサービスと結びつかない悩み、答える根拠を持っていない話題は題材にしない。この線引きがあるからこそ、検索回数の少ない題材にも、選ぶ理由を説明できる。

題材の型は3つに絞ると設計しやすい

地域向けの記事の題材は、次の3つの型に当てはめて考えると、掛け合わせの設計とつなげやすい。

1. 地域の制度や手続きを扱う型

補助や届出のように、地域ごとに内容や窓口が異なる話題である。検索者は、自分の地域ではどこに相談し、何が必要かを知りたい。この型では、自治体などの公的な案内を一次情報として確認し、制度の内容、対象、窓口、期限を正確に書くことが前提になる。制度は変わることがあるため、公開後も案内の更新に合わせて記事を見直す必要がある。

2. 地域事情に根ざした悩みに答える型

気候、住宅事情、交通といった地域の事情が、悩みの現れ方に影響する話題である。たとえば、海に近い地域と内陸の地域では、外壁や設備の傷み方が同じとは限らない。全国向けの一般論では触れられない事情を、自社の対応範囲の実態に即して書くことで、記事は地域の読者の判断材料になる。この型では、地域事情を断定しすぎず、自社が把握している範囲を明示して書くことが大切である。

3. よくある質問に答える型

相談や来店の場で繰り返し聞かれる質問を、そのまま題材にする型である。費用の考え方、期間の目安、初めて相談するときの持ち物、予約や訪問の流れなど、行動の直前に確かめたい内容が中心になる。質問の材料は、受付や相談対応の記録の中にあり、検索回数の調査からは出てこない題材が、この型からは拾える。

3つの型に共通するのは、他社の記事の焼き直しでは作りにくいという点である。SEOスターターガイドも、役に立つコンテンツの条件として、独自性があること、公開済みの内容を最新の状態に保つこと、有用で信頼性が高いことを挙げている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。地域の制度、地域の事情、自社に寄せられる質問は、いずれもその事業者に固有の材料であり、独自性の置き場になる。

記事ページ、店舗・事務所ページ、ビジネスプロフィールの役割分担

地域の事業者の情報発信は、3つの置き場の分担で考えると整理しやすい。

置き場担う役割載せる内容の例
Googleビジネスプロフィール検索結果や地図上で、事業の基本情報を正確に示す事業の種類、所在地、営業時間、サービス、写真、クチコミへの返信
店舗・事務所ページ事業の全体像を示し、相談や来店の判断の受け皿になる対応サービスの一覧、料金の考え方、アクセス、スタッフや代表者、問い合わせ方法
記事ページ個別の悩みや疑問に答え、判断材料を提供する制度や手続きの解説、地域事情に即した回答、よくある質問への回答

ビジネスプロフィールについては、情報の正確さが関連性の土台になる(出典:Googleビジネスプロフィール ヘルプ「Googleのローカル検索結果のランキングを改善するヒント」)。営業時間の変更やサービスの追加があれば、記事を書く前にプロフィールへ反映する順序が自然である。クチコミへの返信も、同ヘルプで案内されている取り組みの1つである。

店舗・事務所ページは、記事からたどり着いた読者が、事業の全体を確認する場所である。記事で個別の悩みに答えても、対応サービスや料金の考え方が書かれていなければ、読者は次の行動を判断できない。逆に、店舗ページだけでは、多様な悩みの言葉を受け止めるには限界がある。

記事ページの役割は、受け皿への橋渡しを含めて設計する。SEOスターターガイドは、リンクを使うことで、利用者や検索エンジンをサイトの他の部分や関連するページにつなげることができるとしている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。記事から、関連するサービスを案内する店舗ページへリンクを張ることは、その実践の1つである。記事ごとに役割を1つに絞り、店舗ページと重なる全体説明は繰り返さないことも、分担を保つうえで有効である。

全国向けの記事との違い

全国向けの記事と地域向けの記事の違いは、地域名の有無ではなく、前提の置き方にある。全国向けは、地域を問わず成り立つ知識や選び方を広い読者に向けて整理する。地域向けは、読者の生活圏を限定し、窓口の場所、対応エリア、地域の事情を前提に含めて書く。

違いは、情報の確かめ方にも表れる。全国向けでは制度の原則を押さえることが中心になるが、地域向けでは、自分の地域での具体的な扱いを自治体などの案内で確かめる工程が加わる。地域名だけを差し替えて同じ内容の記事を並べると、固有の情報が薄いページが増え、読者にとっての区別がつかなくなる。地域向けの記事は、地域が変われば中身のどこが変わるのかを説明できることが、1本として成り立つ条件になる。

もう1つの違いは、評価の物差しである。全国向けの記事は、検索回数の多い言葉での表示を追いやすい。一方、地域向けの記事は、検索回数が少なくても意図が具体的な検索を受けるため、表示回数の大小だけで出来を判断しにくい。Search Consoleで、想定したクエリで表示されているか、クリックされているかといった観点で確認する必要がある。

小さな商圏での優先順位の付け方

商圏が小さい事業者ほど、書ける本数にも、確認に割ける時間にも限りがある。優先順位は、次の観点で付けると判断しやすい。

  • 相談や来店に近い悩みか:行動の直前の疑問に答える題材を先に置く
  • 自社が根拠を持って答えられるか:対応実績のあるサービス、実際に聞かれる質問を優先する
  • 一次情報で裏付けられるか:制度や料金など、確かめる先が明確な題材を選ぶ
  • 既存のページと重ならないか:店舗ページや公開済みの記事と役割が重なる題材は統合を検討する
  • 受け皿が整っているか:プロフィールと店舗ページの情報が古い場合は、記事より先にそちらを直す

進め方としては、まずプロフィールと店舗ページの基本情報を正確な状態にし、次に優先度の高い題材から数本単位で記事を公開し、反応を見てから次を決める流れが現実的である。SEOスターターガイドは、変更の結果がGoogle側に反映されるまでには時間がかかり、一般的には数週間待ってから検索結果への影響を確認することを勧めている(出典:Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」)。短い間隔で一気に本数を増やすより、公開した記事が想定したクエリで表示されているかをSearch Consoleで確かめ、情報が古くなった記事を更新しながら進めるほうが、限られた本数を無駄にしにくい。同ガイドも、公開済みのコンテンツを確認し、必要なら更新することを挙げている。

まとめ

地域の客に届く記事は、地域名を入れた記事のことではない。出発点は、商圏の中にいる人が、どの言葉で、どんな困りごとを検索するかである。記事は全体の役割分担の中で、具体的な悩みに答える部分を担うものとして設計する。

キーワードは、地域の粒度とサービスと悩みの掛け合わせで設計し、検索回数が少なくても、意図が具体的で自社が答えられる題材であれば候補に残す。題材は、地域の制度や手続き、地域事情に根ざした悩み、よくある質問の3つの型で考え、公開後はSearch Consoleで想定したクエリでの表示を確かめ、更新しながら育てる。この順序であれば、小さな商圏でも、本数を競うことなく記事の置き場を説明できる。

なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスであり、題材の設計では検索需要の調査と競合の確認に加えて、その地域で実際に答える意味があるかを判断材料に含めている。地域向けの記事を検討する際の進め方の1つとして、本記事の観点を自社の状況に当てはめて使われたい。

出典

  • Googleビジネスプロフィール ヘルプ「Googleのローカル検索結果のランキングを改善するヒント」
  • Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」
  • Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート(検索結果):概要と基本設定」