記事制作を外注したのに、思ったような記事が上がってこない。納品された原稿を直すのに、自社で書く以上の時間がかかった。こうした経験をした事業者やメディア担当者は少なくないはずである。
行き違いの原因は、たいてい書き手個人の力量だけではない。何を書くかを誰が決めるのか、書いた内容を誰がどう確かめるのか、間違いが見つかったときにどう直すのか。そうした工程の設計が曖昧なまま発注すると、同じ種類のトラブルは書き手を替えても繰り返される。
本記事では、外注で繰り返し起きる行き違いを4つのパターンに整理し、それぞれが工程のどこで生まれるのかを掘り下げる。そのうえで、発注前に確認すべき観点、見積もりや提案書の読み方、そして小さく始めて工程を確かめる進め方をまとめる。「SEO記事 外注 失敗」や「記事作成 代行 選び方」で情報を探している方の、発注前の確認材料になれば幸いである。
外注で繰り返し起きる4つの行き違い
発注側の募集文や相談内容に目を通すと、外注への不満は驚くほど似た形で表れる。大きく分けると、次の4つである。
| パターン | 起きていること | 欠けている工程 |
|---|---|---|
| 1. 事実の誤りが混ざる | 制度の期限、金額、条件などの数字や記述が、一次情報と食い違う | 一次情報との照合 |
| 2. 一般論の寄せ集めで終わる | どのサイトにも書いてある内容の並べ替えで、自社の読者に必要な情報がない | 分析と題材選定 |
| 3. 記事ごとに品質がばらつく | 書き手や納品時期によって、構成・表記・深さが安定しない | 基準の明文化とチェック体制 |
| 4. 修正の工数が発注側に戻ってくる | 確認と手直しに追われ、外注したはずの業務が社内に残る | 修正範囲の取り決めと記録 |
以下、それぞれについて「なぜ起きるか」を工程の視点で見ていく。
1. 事実の誤りが混ざる
法律や制度、料金、統計などの事実を扱う記事では、誤りは読者の不利益に直結する。誤りが混ざる典型的な経路は、検索結果の上位記事やまとめサイトを主な情報源にして書くことである。二次情報には、古い情報や、出典不明のまま転載された数字が含まれていることがある。それをさらに写せば、誤りは検証されないまま増殖する。
防ぐ手立ては単純で、主張ごとに一次情報へ当たることである。制度なら所管官庁の案内や条文、料金なら提供元の公式ページ、統計なら調査主体の公表資料を確認する。Google検索セントラルが公開している「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」でも、コンテンツの質を示すE-E-A-Tの中でも信頼性が最も重要なものと位置づけられている。一次情報への照合が工程に組み込まれていない制作体制では、この種の誤りは偶然ではなく構造として起きる。
2. 一般論の寄せ集めで終わる
キーワードだけを渡して「このテーマで1本」と発注すると、書き手は検索上位の記事を参考に構成を組み立てるしかない。結果として、既存記事の焼き直しに近い原稿になりやすい。
Google検索セントラルのスパムに関するポリシーでは、検索ランキングの操作を主な目的として、ユーザーにとってほとんど価値がなく独自性のないコンテンツを大量に作る行為は「大量生成されたコンテンツの不正使用」として扱われると明記されている。また同ポリシーは、生成AIツールを使って価値を付加せずに大量のページを作ることも、その例として挙げている。つまり一般論の寄せ集めは、読者に響かないだけでなく、検索エンジンの評価の面でも避けるべき方向である。
ここで欠けているのは執筆工程ではなく、その手前の分析工程である。自社の読者は誰で、どの検索語で、どんな疑問を持ってたどり着くのか。競合サイトがすでに答えていることと、まだ答えていないことは何か。この整理がないまま書き始めれば、無難で薄い記事になるのは避けにくい。
3. 記事ごとに品質がばらつく
外注先が複数の書き手で分担している場合、記事ごとの品質差は珍しくない。問題は差そのものよりも、品質の基準がどこにも明文化されていないことにある。表記ルール、見出しの付け方、事実確認の深さ、引用の作法といった基準が文書化されず、書き手個人の判断に委ねられていると、担当者が替わるたびに原稿の出来が変わる。
もう1つは、書く人と確かめる人が分かれていないケースである。書き手自身の見直しだけでは、自分の思い込みや読み違いは検出しにくい。別の担当者が全文を通読し、主張と出典の対応を確かめる工程があるかどうかで、ばらつきの出方は大きく変わる。
4. 修正の工数が発注側に戻ってくる
「外注したのに、結局こちらが直している」。この不満の背景には、修正対応の範囲と回数が発注時に決まっていないことが多い。誤字の修正は含むのか、構成の組み替えは別料金なのか、事実誤りの修正は何回まで対応するのか。取り決めがないと、納品のたびに個別交渉が発生し、発注側の担当者が確認と調整に追われる。
生成AIの使い方についても同様である。ランサーズでは2024年3月から、コンペ方式のデザイン・ライティング業務の依頼で、発注者が生成AIの使用許可・制限を選べる仕組みが導入され、受注者は提案時に使用の有無を申告できるようになった(出典:ランサーズのプレスリリース、2024年3月7日)。クラウドワークスも2024年7月31日にAI活用に関するポリシーを公開し、利用は受発注者間の取り決めに委ねるとしている(出典:クラウドワークスのAI活用に関するポリシー)。つまり、AIをどの工程でどう使うかは、発注前に双方で決めておくべき事項として、各プラットフォームでも扱われている。決めずに進めると、納品物への不信感や手戻りの原因になる。
発注前に確認すべき7つの観点
4つのパターンを踏まえると、発注前に確認すべきことは、書き手の経歴や単価の前に、工程の設計に集約される。次の7点である。
1. 何を書くかを、誰がどう決めるか
記事の題材とキーワードの選定を、発注側と受注側のどちらが担うのかを確認する。受注側が担う場合は、その根拠も聞きたい。検索需要の調査、競合サイトの記事本数や更新状況の把握、自社サイトの既存記事との重複チェックといった分析が、どの範囲まで含まれるのか。題材リストだけが納品されるのか、優先順位とその理由まで示されるのかで、発注側の判断のしやすさは変わる。
2. 書く人と確かめる人が分かれているか
チェック体制の確認である。執筆者とは別の担当者が確認するのか、その確認で何を見るのか。事実関係、表記、構成、誤字脱字のどこまでが対象か。そして確認の記録が残るかどうかも重要である。チェックシートのような形で、どの主張をどの出典で確かめたか、直した箇所はどこかが残っていれば、問題が起きたときに原因を工程へさかのぼって直せる。記録がなければ、同じ誤りが次の記事で再発しやすい。
3. 一次情報との照合をしているか
記事中の事実の主張について、一次情報と照合する手順があるかを確認する。あわせて、出典を記事内や納品物に明示する運用かどうかも聞いておくとよい。出典が示されていれば、発注側の最終確認は「主張と出典を見比べる」作業になり、確認の負担と見落としの両方を抑えやすくなる。
4. 修正対応の範囲と回数
修正の対象範囲、回数の上限、追加費用が発生する条件を、発注前に文書で確認する。特に線引きが曖昧になりやすいのは、事実誤りの修正と、発注側の意向による書き換えの区別である。前者は制作側の責任として無制限に対応するのか、後者は何回まで含むのか。この区別がついているかどうかは、見積もりの誠実さを見る手がかりにもなる。
5. 公開後の測定とリライトの扱い
記事は公開して終わりではない。検索順位や流入の測定を誰がするのか、結果を受けてリライトする場合は誰がどう判断するのかを確認する。Google検索セントラルのSEOスターターガイドでも、公開済みコンテンツを確認し、必要なら更新することが推奨されている。測定と更新が契約の外にあるなら、その作業は発注側に残る。その前提を理解したうえで発注するのと、任せたつもりでいるのとでは、公開後の運用に差が出る。
6. 専門分野での監修の段取り
医療、法律、金融、税務など、専門性が高く誤りの影響が大きい分野では、専門家の監修をどう組み込むかを確認する。受注側で監修者を手配するのか、発注側の顧問や提携先に確認を依頼する段取りなのか。監修の費用と期間が見積もりに含まれているかも含め、後から慌てないよう先に決めておきたい。
7. 発注側が渡す情報の範囲
確認は、受注側の体制を問うことだけではない。自社の一次情報を、発注側がどこまで渡せるかも、記事の出来を左右する。自社にしか分からない情報、たとえば実際の対応手順、料金の考え方、よく寄せられる質問への答え方などが渡せなければ、書き手が使える材料は公開情報だけになり、一般論に寄りやすくなる。
したがって発注前の打ち合わせでは、受注側が求める情報の形も確認したい。ヒアリングの機会があるのか、既存資料の共有で足りるのか、記事ごとに確認事項のやり取りが発生するのか。発注側の担当者が割く時間も含めて見通しを立てておくと、制作が始まってから「思ったより自社の手間がかかる」というずれを防ぎやすい。外注は、発注側の関与をゼロにする仕組みではない。関与の場所を、執筆そのものから、情報の提供と最終確認へ移す仕組みと捉えると、工程の設計も見えやすくなる。
見積もり・提案書の読み方
確認の観点は、見積もりと提案書の読み方にもそのまま使える。金額の総額よりも先に、「何が含まれ、何が含まれていないか」を見ることが大切である。
| 項目 | 含まれている場合の表記例 | 注意したいケース |
|---|---|---|
| 分析・題材選定 | キーワード調査と競合確認を含む | 執筆料のみで、題材は発注側が用意する前提になっている |
| チェック工程 | 執筆者と別の担当者による確認と記録 | 「校正込み」とだけあり、確認の内容が具体化されていない |
| 出典の提示 | 主張ごとの出典対応を納品物に含む | 出典の提示がなく、発注側がすべて検証する前提になっている |
| 修正対応 | 範囲と回数が明記されている | 「修正対応可」とだけあり、上限も追加費用の条件もない |
| 公開後対応 | 測定レポートやリライトの扱いが明記されている | 納品で完了となり、公開後の扱いに一切触れていない |
単価が極端に低い場合は、どの工程が省かれているのかを考える材料になる。執筆そのもの以外の工程、つまり分析、照合、別の担当者による確認、記録の作成には、それぞれ作業時間がかかる。価格だけでは判断できないが、「この価格で、確認した7つの観点がどこまで含まれるのか」を質問し、答えの具体さを見ることは有効である。逆に、工程が細かく分かれて積み上げられている見積もりは、含まれない作業も読み取りやすい。
小さく始めて、工程を確かめる
確認すべき観点が分かっても、言葉のうえの説明だけでは、実際の工程が回るかどうかは分からない。そこで有効なのが、いきなり大量に発注せず、少量の発注で工程そのものを確かめる進め方である。
- 最初の発注は数本に絞り、題材選定の根拠、チェックの記録、出典の提示が実際に付いてくるかを見る
- 意図的に、事実確認が必要な題材を1本含め、一次情報との照合がどう行われるかを確認する
- 修正を1回依頼し、対応の範囲と速さ、記録の残り方を見る
- 公開後の測定について、報告の形と頻度をこの段階で取り決める
少量の発注で見るべきなのは、記事の出来だけではない。納品物に付いてくる資料、やり取りの記録、修正への向き合い方といった、工程の証跡である。本数を増やす判断は、その証跡を確認してからでも遅くはない。大量発注の単価メリットは魅力的だが、工程が合わなかった場合の手戻りも本数に比例して大きくなる。
また、最初の数本は、発注側の最終確認にかかる時間も測っておきたい。出典が付いていて確認が短時間で済むのか、原稿の隅々まで自社で調べ直す必要があるのか。この時間は、継続した場合の月あたりの負担にそのまま積み上がる。単価の比較に、この確認時間を含めて考えるかどうかで、外注先の評価は変わりうる。
まとめ:選ぶのは書き手ではなく、工程である
記事制作の外注で繰り返し起きる行き違いは、事実の誤り、一般論の寄せ集め、品質のばらつき、修正工数の逆流の4つに整理できる。そして、その多くは書き手個人ではなく、分析、照合、確認、記録、取り決めといった工程の有無に原因がある。
発注前に確認したいのは、次の7点である。何を書くかを誰がどう決めるか。書く人と確かめる人が分かれているか。一次情報との照合をしているか。修正の範囲と回数は決まっているか。公開後の測定とリライトはどう扱うか。専門分野の監修の段取りはあるか。発注側が渡す情報の範囲は決まっているか。
この観点で見積もりを読み、少量の発注で工程の証跡を確かめる。それが、外注の失敗を減らすための現実的な手順である。
なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスである。上記の観点を自らの工程に落とし込み、書く工程と確かめる工程を分けること、主張と出典の対応を記録に残すこと、公開後の測定までを扱うことを設計の前提としている。サービス内容の詳細はサイト内の案内を参照されたい。
出典
- Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
- Google検索セントラル「Googleウェブ検索のスパムに関するポリシー」(大量生成されたコンテンツの不正使用の項)
- Google検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」
- ランサーズ:仕事依頼における生成AIの使用許可・制限の選択機能に関する公開情報(2024年3月導入)
- クラウドワークス「クラウドワークス上でのAI活用に関するポリシー」(2024年7月31日公開)