士業や医療の分野では、記事の内容そのものが広告規制の対象になり得る。一般の記事と同じ手順で書き、公開直前に表現を直す進め方では、確認すべき論点を取りこぼすおそれがある。規制のある分野では、書く技術よりも先に、どの資料を確認し、誰が最終的に判断し、その確認をどう記録するかを決める工程の設計が問われる。

本記事は、法務助言ではない。個別の表現が適法かどうかを判断するものでもなく、その判断は、資格を持つ本人、所属する団体、所管する行政機関など、規制を解釈する主体に委ねられる。本記事が扱うのは、判断を受ける前提で記事を作る工程である。すなわち、一次資料をどこで確認するか、禁止や制限の対象になりやすい表現の型をどう知るか、資格者本人による確認をどの段階に置くか、確認の記録を何の形で残すかという制作側の手順を整理する。

本記事に「この表現であれば問題ない」という趣旨の記述はない。規制の文言やガイドラインの例は確認の出発点を示すために引くものであり、個別の記事への当てはめを保証するものではない。公開の可否に迷う表現は、載せないか、資格者本人や所属団体に確認してから扱うことが前提になる。

規制のある分野で工程が先に来る理由

規制のない分野では、事実の正確さと読みやすさが主な確認事項になる。規制のある分野では、それに加えて、広告として扱われる表示かどうか、広告できる事項の範囲に入っているかどうか、表示が義務付けられている事項が漏れていないかどうかが、本文の良し悪しとは別の層で問われる。書き終えてから規制に気づくと、表現の言い換えでは済まず、構成自体を作り直すことになりやすい。

責任の所在も理由である。外部に委託した場合でも、広告の主体は資格者本人や事業者であり、制作会社が書いたことは免責の理由にならない。医療分野では、医療広告等ガイドラインが、広告の実施者だけでなく、依頼を受けて広告を企画や制作する者も指導等の対象になり得るとしている(出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」)。外注の有無によらず、最終確認を資格者本人が行う段取りを先に決める必要があるのは、このためである。

工程の全体像:4つの段階

規制のある分野の記事制作は、次の4段階で組み立てる。順序が重要であり、確認の段取りを執筆後に考える進め方では、確認者が不在のまま原稿だけが完成する事態が起きる。

段階行うこと残すもの
1. 一次資料の確認法令、所管省庁のガイドライン、所属団体の規程の最新版を読む確認した資料名と版、確認日
2. 表現の型の洗い出し題材に触れる禁止や制限の類型を一覧にする題材ごとの確認項目表
3. 確認の段取り誰が、いつ、何を確認するかを執筆前に合意する確認者、期限、差し戻しの扱いの合意
4. 記録指摘と修正、同意や根拠資料の所在を残す確認記録、公開版の写し

段階1:書く前に所管の一次資料を確認する

一次資料とは、法令の条文、所管省庁のガイドライン、所属団体が定める規程や指針を指す。解説記事や制作会社のブログは手がかりにはなるが、根拠としては扱わない。条文番号、規程の名称、施行や改正の時期は、必ず原典に当たって確認する。本記事でも、原典で確認できた範囲のみを記述する。

確認の際は、資料の版を意識する。法令もガイドラインも改正されるため、過去の記憶や以前の案件の資料の写しをそのまま使わない。確認した資料の名称と確認日を記録に残すことが、「いつの時点の規制に基づいて書いたか」を説明する根拠になる。

医療分野:医療法と医療広告等ガイドライン

医療法第6条の5第1項は、虚偽の広告をしてはならないとする。同条第2項は、基準として、他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(第1号)、誇大な広告(第2号)、公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告(第3号)を禁止し、第4号に基づき医療法施行規則第1条の9が、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく治療等の内容又は効果に関する体験談の広告と、治療等の内容又は効果について患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告を禁止する(出典:医療法第6条の5、医療法施行規則第1条の9)。なお、証明できない情報の引用は独立の禁止類型ではなく、誇大広告の一例として扱われる。同条第3項は、広告できる事項を列挙するポジティブリスト方式を採るが、医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として省令で定める場合を除くとし、医療法施行規則第1条の9の2の要件をすべて満たせば広告可能事項の限定は解除される。要件は、患者等が自ら求めて入手するウェブサイト等であること、問い合わせ先の明示、自由診療については通常必要とされる治療等の内容・費用等と主なリスク・副作用等の情報提供である(出典:医療法第6条の5第3項、医療法施行規則第1条の9の2)。

条文の解釈と運用は、厚生労働省の医療広告等ガイドラインに具体例とともに示されている。同ガイドラインは、広告に該当するかどうかを、患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)、医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であることの3要件で判断すると整理している(出典:厚生労働省「医療広告等ガイドライン」)。記事形式の文章であっても、3要件を満たせば広告として扱われ得る点が、制作上の出発点になる。

治療等の内容又は効果に関する体験談は、医療法施行規則第1条の9第1号が直接禁止する。同ガイドラインは、患者その他の者の主観又は伝聞に基づくこの種の体験談は、個々の患者の状態等により感想が異なり誤認を与えるおそれがあるため、記述内容が広告可能な範囲であっても広告は認められないと解説している(出典:医療法施行規則第1条の9第1号、厚生労働省「医療広告等ガイドライン」)。この範囲の体験談や口コミを記事の材料に使う発想は、医療分野ではそのままでは成り立たない。制作側は、題材の段階でこの制約を把握しておく必要がある。

弁護士分野:業務広告に関する規程と指針

弁護士の広告については、日本弁護士連合会の会規である「弁護士等の業務広告に関する規程」がルールを定め、その解釈と運用は「業務広告に関する指針」に具体例とともに示されている(出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」「業務広告に関する指針」)。同規程第2条は広告の定義を置き、顧客または依頼者となるように誘引することを主たる目的とする情報の伝達や表示を対象とする。

同規程第3条は、禁止される広告として、事実に合致していない広告、誤導又は誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告、困惑させ又は過度な不安をあおる広告、特定の弁護士等と比較した広告、法令や会則等に違反する広告、品位又は信用を損なうおそれのある広告の類型を定める(出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第3条)。同規程第4条は表示できない事項を定め、訴訟の勝訴率などがその対象に含まれる。同規程第9条は広告への弁護士の氏名と所属弁護士会の表示を定め、同規程第11条は広告に関する記録の保存を定める。これらは法律ではなく会規であるが、会員にとっては遵守すべき規律であり、記事制作でも法令と同様に一次資料として扱う。

分野共通:景品表示法

分野を問わず適用されるのが、不当景品類及び不当表示防止法、いわゆる景品表示法である。景品表示法第5条は不当表示を禁止し、第1号は商品やサービスの品質や規格などの内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示などを優良誤認表示として、第2号は価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示などを有利誤認表示として定める(出典:不当景品類及び不当表示防止法第5条、消費者庁「景品表示法」関連資料)。医療広告等ガイドライン自体も、医療に関する広告の規制は医療法に基づく規定のほかに景品表示法などがあると明記している(出典:厚生労働省「医療広告等ガイドライン」)。

効果や性能に関する表示については、不実証広告規制にも注意が要る。消費者庁長官は、表示が優良誤認に当たるかどうかを判断する必要がある場合に、事業者に、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、資料が提出されない場合などには、その表示は不当表示とみなされる仕組みである(出典:不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項)。記事に効果や実績の数字を書く場合は、その根拠資料が手元にあるかが執筆以前の問題になる。

第5条第3号に基づき内閣総理大臣が指定する表示の1つとして、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示、いわゆるステルスマーケティングを対象とする指定が、2023年10月1日から施行されている(出典:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」に関する告示および運用基準)。事業者から依頼を受けて作成した記事や投稿を、第三者の自主的な発信のように見せる扱いは、分野を問わず避けなければならない。

段階2:禁止や制限される表現の型を知る

一次資料を確認したら、題材に即して、問題になりやすい表現の型を一覧にする。次の型を手がかりに原稿を点検する。ただし、型に当てはまらないことは、適法であることの証明にはならない。型は点検の入口であり、出口ではない。

表現の型確認の観点
虚偽、事実と異なる内容経歴、実績、事例が事実に基づくか。架空の事例や、実在しない声を載せていないか
比較して優良であるとする表現特定または不特定の他者と比較し、自らが優れていると示していないか
誇大、過度な期待を持たせる表現結果を約束したり、確実であるかのような印象を与えたりしていないか
不安をあおる表現期限や不利益を強調し、冷静な判断を妨げる形で行動を迫っていないか
証明できない内容、主観に基づく内容客観的な根拠を示せない評価や、体験談を根拠化していないか
価格や取引条件の見せ方条件を伏せたまま、有利であることだけを強調していないか
広告であることが分からない見せ方事業者の表示であることが、読み手に判別できる形になっているか

医療分野では、書こうとしている内容が広告可能な事項の範囲に入るかどうか自体が点検項目になる。ポジティブリスト方式の下では、禁止表現を避けるだけでは足りず、広告できる事項として定められているか、定められていない場合は医療法施行規則第1条の9の2の限定解除の要件を満たすかが先に問われる(出典:医療法第6条の5、医療法施行規則第1条の9の2)。弁護士分野では、表示できない事項の有無と、氏名や所属弁護士会など表示すべき事項の有無が、文章表現とは別の点検項目になる(出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第4条、第9条)。

段階3:確認の段取りを先に決める

下書きへの確認は、原稿が完成してから依頼先を探すのではなく、執筆に入る前に段取りを決める。決める事項は、確認者の氏名と立場、確認してもらう範囲、確認の期限、指摘を受けた場合の修正と再確認の方法、最終的に公開を承認する者の5点である。確認者は、原則として資格者本人である。多忙を理由に確認を省略する設計は、工程として成立しない。確認に要する時間は制作期間に最初から組み込む。

確認の依頼時には、原稿だけでなく、段階1で確認した一次資料の名称と版、段階2の確認項目表、数字や事例の根拠資料をあわせて渡す。確認者が条文や規程に立ち戻る手間を減らすことは、確認の質を上げ、制作側が一次資料に基づいて書いたことを示す証跡にもなる。

指摘への対応にも決まりが要る。修正の指示があった箇所は、その範囲で修正し、修正後に再度確認を受ける。指摘箇所を別の表現に置き換えて確認を省略しない。制作側が懸念を持つ表現について、資格者本人の判断を仰がずに公開に進むこともしない。判断は資格者本人に、制作と記録は制作側に、という役割分担を文書で残すことが望ましい。

段階4:確認の記録を残す

記録に残すのは、確認した一次資料の名称と版と確認日、確認項目表、原稿の版、確認者の指摘とそれへの対応、公開を承認した日付と承認者、公開した記事の写しである。記録の目的は2つある。1つは、後日に規制の改正や外部からの問い合わせがあった際に、いつの時点の、どの資料に基づいて、誰が確認した記事かをたどれるようにすることである。もう1つは、同じ事業者の次の記事で、前回の指摘を再発防止に使えるようにすることである。

記録の保存期間や形式に分野ごとの定めがある場合は、それに従う。弁護士の業務広告については、規程が広告に関する記録の保存を定めている(出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第11条)。定めがない分野や事項についても、公開期間中とその後の一定期間は記録を保持する運用を制作開始時に決めておく。記録が残っていない確認は、行われなかった確認と区別がつかない。

外注する場合に確認工程をどう組み込むか

記事制作を外注する場合、発注の段階で確認工程を仕様に含めることが必要である。具体的には、納品物に原稿本体だけでなく、根拠資料の一覧と確認項目表を含めること、資格者本人による確認と修正の往復を回数も含めて定めること、確認を受けていない原稿を公開しないことを、発注条件として明記する。価格や本数だけを仕様とし、確認工程を仕様の外に置くと、確認は公開直前の形式的な手続きに後退しやすい。

受託側にも求められる備えがある。題材ごとに所管の一次資料を確認する手順を持つこと、事実主張には出典を付けて納品できること、規制上の判断が必要な箇所を自ら決めずに確認事項として切り分けて提示できることである。「規制対応済み」といった包括的な保証を受託側がうたう場合は、その根拠と範囲を発注側が確認する必要がある。個別表現への当てはめの判断は資格者本人に帰属するという前提を双方が共有することが、外注における確認工程の土台になる。

公開前チェック

  • 所管の法令、ガイドライン、所属団体の規程の最新版を確認し、資料名と確認日を記録したか
  • 書こうとしている内容が、広告可能な事項や表示できる事項の範囲と照らして点検されているか
  • 虚偽、比較優良、誇大、不安をあおる表現、証明できない内容の型で原稿を通読したか
  • 数字や効果、実績の表現について、裏付けとなる根拠資料が手元にあるか
  • 表示が義務付けられている事項に漏れがないか
  • 事業者の表示であることが読み手に判別できる形になっているか
  • 資格者本人の確認と公開承認を得て、その経過を記録に残したか

まとめ:規制対応は表現の修正ではなく、工程の設計である

規制のある分野の記事は、公開直前に表現を点検するだけでは作れない。書く前に所管の一次資料を確認し、禁止や制限の対象になる表現の型を題材に即して洗い出し、資格者本人による確認の段取りを執筆前に決め、確認の経過を記録として残す。この4段階を先に設計することが、書き直しの手戻りを減らし、記事を継続して公開できる状態を作る。規制の有無や内容は分野ごとに異なり、改正もされるため、「規制がない分野である」という前提で工程を省略することも適切ではない。分野が変われば、一次資料を確認し直すところから始める。

なお、本記事を公開しているキジカルテは、SEO記事の制作と分析を扱うサービスであり、規制のある分野の題材では、一次資料の確認、確認項目の切り分け、資格者本人による確認を受ける段取りと記録を制作工程に含めることを工程の前提としている。サービス内容の詳細はサイト内の案内を参照されたい。

出典

  • 医療法(e-Gov法令検索)第6条の5
  • 医療法施行規則第1条の9、第1条の9の2
  • 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)
  • 日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」
  • 日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」
  • 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条、第7条第2項
  • 消費者庁「景品表示法」関連資料、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」に関する告示および運用基準